シヴィルサーバントとオピニオンリーダー

建築界に激震です。それも設計界では(施工業界ではゼネコン談合問題等常連?だが)、阪神大震災のような大災害時以外では、前代未聞の(一般メディアでの取り上げられ方も含め)構造計算書偽造問題です。ここで多くの皆様にはっきり言明しておきたいのは、今までにも水面下ではこのような問題は数多くあったかのような報道がなされていますが、少なくとも建築家界ではそのようなことはありえないということです。今回の問題は複合的犯罪です。

これまでにも建築界で、一見するとこれと同じようなような問題が取りざたされたことはあります。しかし多くは業者の設計施工ゆえの問題であったり、施工性の問題であったり、また構造基準の設定問題でした。設計者にとって設計図は神聖なものです。一般的に構造家も含めた設計者は技術に対して真摯です。勿論構造家のセンスによって許容範囲内で、構造メンバーが変わることはあります。しかし今回のような改ざん問題は論外で、繰り返しますがこれはミス入力ではなく故意に行われたのなら犯罪問題です。その辺は是非皆さんに御理解いただき、冷静に成り行きを見ていただきたいと思います。

強いて私見で分析しますと、建築に対する意識の問題です。建築を単なる事業(勿論それも否定はしませんが)の内の商品だと捉えすぎると、このような事態が起こりがちだろうと想像されます。社会の中で建築が三次元的に存在することは、多かれ少なかれ人々に何らかの影響を与えているのです。その意味では都市におけるもう一つのオピニオンリーダーであるともいえるのです。また機能的には人々の生活を支える立派なシビルサーバントであるともいえます。こう考えると、これは関係者に限らず都市全体が、合理性への関心は高いのだが、建築に対して、先の両方面の役割があることへの慢性的欠如感を起こしていることが根底的に問題なのかもしれません。どうか建築を愛して下さい。